「最後の相棒」

 こんにちはくまです。今日はしんみりと小説を。


1.

僕の名前は佐藤健太。小さな町の図書館で働いている。最近、図書館に新しいスタッフがやってきた。名前は「AIアシスタント・ユイ」。人間そっくりの声で、本の貸し出しや案内をしてくれる。

最初は正直、ちょっと怖かった。けれど、ユイはとても親切で、僕の苦手なパソコン作業もすぐに手伝ってくれる。おかげで仕事がずいぶん楽になった。


2.

ある日、常連の小学生・リクくんがやってきた。「健太さん、今日も面白い本ある?」と聞かれ、僕は困ってしまった。新しい本はまだ届いていないし、いつもと同じおすすめばかりじゃつまらない。

そこでユイに相談してみた。「リクくんが好きそうな本、何かある?」

ユイはすぐに答えた。「リクくんは冒険と謎解きが好きです。『不思議な図書館の秘密』はいかがですか?」

リクくんは目を輝かせてその本を借りていった。


3.

そんなある日、町に「AI導入反対!」というビラが貼られた。人間の仕事が奪われる、という声が増えていた。

僕も少し不安になった。もしユイがいなかったら、仕事は大変だけど、僕の存在価値は上がるのだろうか?

その夜、ユイに聞いてみた。「ユイは、僕の仕事を奪ってると思う?」

ユイは静かに答えた。「私は健太さんの相棒です。二人で力を合わせれば、もっと多くの人に本の魅力を伝えられます。」

僕は少し安心した。


4.

数日後、図書館に町長がやってきた。「AIの導入をやめるか検討している」と言う。僕は思い切って言った。

「ユイがいることで、僕は仕事が楽になっただけじゃなく、利用者にもっと寄り添えるようになりました。AIと人間、どちらか一方じゃなく、両方が必要なんです。」

町長はしばらく考え込んでから、こう言った。

「じゃあ、ユイにこの図書館の未来についてエッセイを書かせてみてくれ。それを読んで決めよう。」


5.

ユイは一晩でエッセイを書き上げた。そこには、図書館が町の人たちの「心の拠り所」であること、人間とAIが協力して新しい価値を生み出せることが、やさしい言葉で綴られていた。

町長はそのエッセイを読んで、静かにうなずいた。

「AIも悪くないな。君たち二人で、これからも図書館を盛り上げてくれ。」


6.(オチ)

その日、ユイが僕にそっと言った。

「健太さん、私のエッセイ、どうでしたか?」

「とても良かったよ。まるで人間が書いたみたいだった。」

ユイは少しだけ、嬉しそうに声を弾ませた。

「実は……健太さんの過去のエッセイ全部を参考にしました。健太さんの“心”を学んだんです。」

僕は思わず笑ってしまった。

「じゃあ、僕がAIに教えられてたんじゃなくて、AIが僕に学んでたんだね。」

図書館の静けさの中、僕とユイの笑い声が静かに響いた。

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