こんにちは、くまです。
今日は少し毛色を変えて、人型ロボット(ヒューマノイド)の話です。コンサルティング会社のMcKinseyが出したレポートが、この分野を「今後10年で最大のビジネスチャンス」と呼んでいて面白かったので紹介します。
1. 普及のカギは「AI」じゃなく「部品」だった
ヒューマノイドの実用化というと、つい「AIがどれだけ賢くなるか」が焦点だと思ってしまいますが、McKinseyは違う見方をしています。むしろ体を動かすための「部品づくり」こそが最大の壁だ、という指摘です。
2. コストの中身: アクチュエーターが40〜60%
ヒューマノイド1体のコスト(BOM=部品表の合計金額)のうち、40〜60%を占めるのがアクチュエーター(関節を動かすモーターと歯車の組み合わせ)です。次いでセンサーや周囲を認識する部品が10〜20%を占めます。中でもアクチュエーターは、性能の差がそのままロボットの動きの良さに直結する、いちばん重要な部品とされています。
3. 少量生産
ここで悪循環が起きています。部品メーカーは専用の量産ラインに巨額の投資をしたいのですが、ヒューマノイドの注文はまだ「数千台」ではなく「数十台」の単位でしかありません。かといって少量生産の特殊部品は割高なので、ロボットの最終価格が下がらず、価格が高いままだと台数も増えない――という具合に、お互いが足を引っ張り合っています。
4. 圧倒的に有利な中国
この供給網で圧倒的に有利なのが中国です。ヒューマノイドに使われる永久磁石の90%を中国が生産しており、精密ベアリングやエンコーダー(回転を測るセンサー)などもEV(電気自動車)向けサプライチェーンと重なる形で強みを持っています。
モルガン・スタンレーの試算では、Tesla のヒューマノイド「Optimus」を中国の部品を使わずに作ろうとすると、部品コストが約4.6万ドルから13.1万ドルへと、3倍近くに跳ね上がるとされています。実際、中国のUnitree社は人型ロボット「G1」を1.6万ドル(約240万円)で売り出していて、欧米メーカーがすぐには太刀打ちできない水準です。
5. チャンスはどこにあるのか
McKinseyが「ビジネスチャンス」と呼ぶのは、まさにこの空白地帯です。特に有望なのがセンサー分野で、業界標準として広く使われるヒューマノイド用のセンサー一式がまだ存在せず、各メーカーがカメラ・深度センサー・IMU(傾きや動きを測る部品)・力覚センサーをバラバラに寄せ集めて自前で調整しているのが現状です。McKinseyは、技術が成熟するのを待たずに今のうちに供給網を押さえ、部品を組み上げる力を持った会社が、台数が増えるにつれて優位を積み重ねられると結論づけています。
まとめ
AIの進化ばかりが注目されがちなヒューマノイド市場ですが、実際に台数を左右するのは地味な「部品供給網」の勝負のようです。くまは過去にアクチュレーターの記事を書きましたが、これから大きく伸びる人型ロボット市場向けの部品や素材のビジネスこそが、日本の製造業が力を入れるべき分野ですね。
このレポートに書かれている通り、日本製の高性能な部品は「数が出ないから安くできない、高いからたくさんは売れない」というジレンマに陥っており、これを解消しない限り、とにかく値段とスピードで勝負してくる中国に市場を支配されてしまいます。
日本には「介護問題」や「肉体労働者不足」という明らかなニーズがあるのだから、日本政府は「人型ロボットを活用した肉体労働者不足の解消」を経済政策の中心に据えた上で、このジレンマを解消する施策を打つべきだと私は思います。部品のニーズが大きく伸びることを保証してあげれば、部品メーカーも大きく投資してコストを下げることが可能になります。
(参考: McKinsey「Turning humanoid supply chain constraints into billion-dollar wins」2026年4月。Tesla Optimusの部品コスト試算はモルガン・スタンレーによるもの)


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