【ヒューマノイド】「買う価値のある日本企業はないが、部品は全部ある」——ゴールドマンが挙げた11社とミネベアミツミ・NSK・ニデックの深掘り

こんにちは、くまです。

以前、ゴールドマン・サックスがヒューマノイドロボットの出荷台数予測を4倍超に引き上げたという記事を書きましたが、その元になったX投稿に、とても端的で刺さるフレーズがありました。「日本には買う価値のあるヒューマノイドロボット企業はないが、部品の全リストを持っている。そしてそちらのほうが良いビジネスだ」というものです。今回はこの視点から、具体的にどんな日本企業が挙がっているのか、さらに主要3社を深掘りして紹介します。

1. アクチュエータ市場の数字

投稿では、ゴールドマン・サックスの分析として、2025年時点でアクチュエータがヒューマノイドロボットの部品収益全体の約57.8%を占め、年36%のペースで成長しているという数字が紹介されています。以前の記事でも触れた通り、ボストン・ダイナミクスの「アトラス」ではアクチュエータがBOM(部品原価)の52%を占めるとされており、この部品カテゴリーの重要性が改めて裏付けられる形です。

ヒューマノイドロボットのアクチュエータ市場の指標
出所: ゴールドマン・サックスの分析をもとに作成(2025年時点)

2. ゴールドマンが挙げた日本企業11社

投稿で紹介されているゴールドマン・サックスのチャートには、次の11社(うち10社が上場企業)が並んでいます。

  • デンソー
  • アイシン
  • ジェイテクト
  • ハーモニック・ドライブ・システムズ
  • NTN
  • 日本精工(NSK)
  • ニデック
  • 安川電機
  • ファナック
  • 三菱電機
  • ミネベアミツミ

自動車部品大手(デンソー、アイシン、ジェイテクト)、ベアリングメーカー(NTN、NSK、ミネベアミツミ)、モーター・減速機メーカー(ニデック、ハーモニック・ドライブ・システムズ)、産業用ロボット大手(安川電機、ファナック)、総合電機(三菱電機)と、業種はかなり幅広いことが分かります。安川電機とファナックについては、以前「ファナック vs 安川電機」という記事で比較しているので、気になる方はそちらもどうぞ。

3. 3社を深掘り:ミネベアミツミ・NSK・ニデック

11社まとめて軽く紹介するだけでは物足りないので、まずは情報が豊富だった3社を詳しく見ていきます。

ミネベアミツミ:5つの重点分野の一角、ベアリング供給網の強さ

ミネベアミツミは世界最大級のベアリング(軸受)メーカーで、ヒューマノイドロボットを「AIサーバー・商用ドローン・完全自動運転(LiDAR)・ニューモビリティ・航空機」と並ぶ重点成長分野の一つに明確に位置付けています。供給する製品はベアリングだけでなく、ボールねじ、半導体、フレームレスモーターと幅広く、ヒューマノイドの片手だけで30〜100個ものベアリングが使われると見込まれています。

2026年3月期の連結決算は、売上高1兆6,644億円(前年比9.3%増)、営業利益1,040億円(同10.1%増)といずれも過去最高を更新。中核のプレシジョンテクノロジーズ(PT)セグメントも売上高2,812億円(同10.0%増)、ボールベアリング売上高864億円(同8.5%増)と好調です。続く2027年3月期第1四半期では、PTセグメントの営業利益率が23.3%に達し、ベアリングの月産体制も3億7,800万個規模に迫っているとされます。CES出展をきっかけに米国・中国を中心に受注・引き合いが加速しているとも報じられており、ヒューマノイド向け需要の高まりが実際の数字に表れ始めている段階と言えそうです。

ミネベアミツミ2026年3月期決算の前年比成長率
出所: ミネベアミツミ決算説明資料をもとに作成(2026年3月期、前年比)

日本精工(NSK):2028年の市場投入を目指すアクチュエータ開発

日本精工は台湾のデルタ電子と協業し、ヒューマノイドロボット向けの「ロータリーアクチュエータ」と「リニアアクチュエータ」を開発しています。ロータリーアクチュエータは超薄肉軸受の最適配置により、他社比で30%高いトルク密度を実現しながら小型・軽量化を両立させたのが特徴です。2025年の国際ロボット展に参考出展し、顧客ニーズとのすり合わせを進めながら2028年の市場投入を計画。長期的には2036年にロボティクス事業を主力事業の一つに育てる方針を掲げています。

2027年3月期の業績計画では前年比で増収増益を見込む一方、構造改革費用として90億円を織り込んでおり、まずは営業利益率10%以上への回復を目指す段階です。補修・交換部品に状態監視ソリューションを組み合わせたPLM(製品ライフサイクル管理)ビジネスの拡大と並行して、ヒューマノイドロボットなど新領域の開拓にも力を入れています。

ニデック:減速機に290億円投資、グループ横断で部品を一体提案

ニデックは、日本とフィリピンに約290億〜300億円を投じて減速機の新生産ラインを整備し、2026年度内に年産60万台体制を構築、中・大型減速機で世界トップシェアを狙う方針を打ち出しています。実際の供給を担う子会社ニデックドライブテクノロジーは、2025年度の連結売上高107.3億円のうち減速機が約4割を占めており、2029年度までにこの比率を5割まで引き上げる計画です。

さらに、モーター・減速機・センサー・光学レンズといったヒューマノイド(フィジカルAI)関連部品を、グループ各社の垣根を越えて統合的に提案する体制づくりも進めており、2026年には米シカゴの自動化・ロボット展示会「Automate」にもニデックドライブテクノロジーとニデックモーターズが出展しています。

この3社を比べると、ミネベアミツミはすでに決算数字にヒューマノイド関連の勢いが表れ始めている段階、NSKは2028年の市場投入に向けて開発を進めている段階、ニデックは減速機生産能力への大型投資で先手を打っている段階と、同じ「部品メーカー」でも進捗のフェーズがそれぞれ異なることが分かります。

4. 投資する上での注意点

ここで注意したいのは、挙がっている企業の多くは自動車部品や産業機械が主力事業であり、ヒューマノイドロボット関連はまだ全体の売上に占める割合が小さいという点です。「ヒューマノイド市場が拡大すれば、これらの企業の株価もそのまま連動する」というほど単純な話ではなく、各社の売上構成の中でヒューマノイド向けがどこまで伸びてくるかを、今後の決算で個別に見ていく必要があります。以前の減速機市場の記事で触れた通り、ハーモニック・ドライブ・システムズのように比較的「純粋」にこのテーマに近い企業もあれば、三菱電機のように事業全体に占める比率がごく小さい企業も混在しています。

まとめ

「日本には買うべきヒューマノイドロボット企業はないが、部品の全リストを持っている」というフレーズは、裏を返せば「完成品メーカーの勝者が誰になるか分からなくても、部品側に投資すればどの完成品メーカーが勝っても恩恵を受けられる」という、ピックス・アンド・ショベル(つるはし商売)型の投資アイデアとも言えます。ただし、各社の事業全体に占めるヒューマノイド比率はまだ小さいものが多く、過度な期待は禁物です。残る8社(ハーモニック・ドライブ・システムズ、安川電機、ファナック、NTN、デンソー、アイシン、ジェイテクト、三菱電機)についても、情報が揃い次第あらためて掘り下げていく予定です。数字は必ずご自身でも一次情報(各社IR資料)を確認してください。

ぜひ日本メーカーには、新しいゴールドラッシュのツルハシになってもらいたいものです。

(参考: Melvin氏(@MelvinInvests)のポスト、ゴールドマン・サックスのチャート分析をもとに作成)

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